子育て中の備蓄、3年の試行錯誤で気づいたこと

公開: 2026年6月20日更新: 2026年6月21日備え太郎
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著者について

私は2歳と5歳の子どもを持つ母親です。夫が仕事で頻繁に不在になることもあり、災害時に「一人で子どもたちを守れるか」という不安から、本格的な備蓄を始めました。最初に取り組んだのは長女が2歳のとき、ちょうど大きな台風が相次いだ年のことです。

「備蓄をしなければ」という気持ちはありながら、実際に何をどれだけ揃えればよいかがまったくわからず、手探りで進めた3年間でした。途中で「これは子どもには使えない」と気づいて買い直したものも多く、無駄な出費も重ねてきました。

この記事では、小さな子どもがいる家庭ならではの備蓄の難しさと、試行錯誤の末にたどり着いた考え方をお伝えします。防災の専門資格は持っていませんが、実際の生活の中で積み上げてきた経験が、同じ境遇の方の参考になれば幸いです。


目次

子育て家庭の備蓄、実態はどうなっているのか

内閣府が公表している「防災に関する特別世論調査」では、自然災害への備えとして食料や飲料水を用意している世帯の割合は全体の約50〜60%台にとどまり、特に若い子育て世代では備蓄の優先度が下がりやすい傾向が読み取れます。日々の育児や家事に追われ、「いつかやろう」と後回しになりがちな現状が浮かび上がります。

総務省の家計調査では、乳幼児を抱える世帯の可処分所得に占める食費・育児関連費の割合が他の世帯類型に比べて高く、防災備蓄への支出余力が相対的に小さいことも示唆されています。限られた予算の中で、日常の育児用品と備蓄物資の両方を揃えるのは、現実的にかなりの負担です。

また、内閣府の「大規模地震時の人的被害の軽減に関する検討会」の資料によると、災害時に最も支援を必要とする層として、乳幼児・障害者・高齢者が挙げられています。子どもは自分で危険を回避する能力が低く、食事・排泄・睡眠のサポートを大人に依存しているため、親の備えが子どもの命に直結します。

にもかかわらず、備蓄の啓発情報の多くは「成人2人分を3日間」という前提で語られることが多く、乳幼児特有のニーズ(粉ミルク、離乳食、紙おむつ、体温調節用品など)が十分に取り上げられていないケースも見受けられます。

消防庁の「住宅防火対策の推進に関する検討部会」の資料でも、子育て世帯の防災意識について「意識はあるが行動に移せていない」層が一定数存在することが指摘されています。知識と行動の間のギャップを埋めるには、「子どもがいる家庭の備蓄」に特化した具体的な情報が求められています。

私自身もまさにその「意識はあるが行動できていない」状態からスタートしました。最初の一歩を踏み出してからの3年間、子どもの成長とともに備蓄の中身も何度も見直してきた経緯を、以下のエピソードで詳しく振り返ります。


最初の台風で気づいた、備蓄の「穴」

長女が2歳だった秋、大型の台風が接近するという予報が出ました。当時の私はあわてて近所のスーパーへ向かいましたが、棚にはほとんど何も残っていませんでした。

かろうじてカップ麺と缶詰を数個手に入れ、「これで大丈夫だろう」と思ったのですが、帰宅してすぐに気づいたのです。カップ麺は2歳の子どもには塩分が多すぎる。缶詰のコーンは食べさせられても、ほかの缶詰は硬くて食べさせられるものがない。お湯を使うにも電気ガスが止まったら手段がない、と。

当日の夜は幸いにも停電しませんでしたが、「もし停電が3日続いたら、この子に何を食べさせるのか」という問いに、まったく答えられませんでした。子どもに与えられる食料が何一つ準備できていなかったのです。

この経験から、備蓄を「大人の食料をまず揃える」という発想ではなく、「子どもが食べられるものから考える」という順番に変えました。当時の長女が口にできるものをリストアップしてみると、軟らかいご飯、うどん、バナナ、ヨーグルト(常温保存不可)など、災害時に確保しにくいものばかりでした。

翌週からレトルトのベビーフードを少しずつ買い足し、アレルギー成分を一つひとつ確認しながら、「この子が3日間食べ続けられるもの」を揃えることを最初の目標にしました。当たり前のことですが、子どもの口に入るものは安全が最優先であり、非常時だからこそ妥協できない部分だと痛感しました。

また、この台風では停電こそしなかったものの、お風呂が使えなかった日があり、子どもを清潔に保つことにも苦労しました。子ども用のウエットティッシュが十分になく、翌日から大量購入するようになったのもこの経験がきっかけです。最初の台風は「備蓄の穴を全部教えてもらった出来事」として、今でも鮮明に覚えています。


紙おむつが足りなくなった、あの冬の記憶

次女が生後8ヶ月のころ、大雪による交通麻痺が3日ほど続いたことがありました。自宅周辺の道路が凍結し、車での外出ができず、ネットスーパーも配送停止という状況でした。

このとき最初に困ったのが、紙おむつです。手元に残っていたのは2日分ほどで、3日目の朝には完全に底をついてしまいました。仕方なく、よく使っていた布おむつカバーを引っ張り出してきましたが、そもそも布おむつの枚数が少なく、洗濯のたびに室内干しでなかなか乾かず、何度もひやひやしました。

紙おむつは意外とかさばるため、備蓄に組み込んでいませんでした。でも「2〜3日分では足りない」ということをこの経験で身をもって知りました。それからは「1パック(約50〜60枚)を常にストックする」というルールを設け、残り半分になったら補充する「ローリングストック」に切り替えました。

この経験から気づいたことがあります。消耗品の備蓄は「食料」だけに気を取られがちですが、乳幼児のいる家庭では「排泄」「清潔」に関わる物資も、食料と同じかそれ以上に重要だということです。

おむつと同様に、粉ミルクの備蓄についても後から反省しました。完全母乳だったため「粉ミルクは不要」と思い込んでいたのですが、災害時の授乳には精神的・肉体的な疲労が影響し、母乳が出にくくなるケースがあると後で知りました。液体ミルクの存在もこの頃初めて知り、常温保存ができてそのまま与えられる便利さから、非常用に数本ストックするようになりました。

お子さんの月齢や体重で必要なおむつのサイズも変わるため、ストックを溜めすぎると使えなくなることもあります。ローリングストックとサイズ管理をセットで考えることが大切だと、この冬に学びました。


子どもが「怖くて寝られない」と言った夜

震度4の地震が夜中に起きたとき、長女(当時4歳)は「怖い、怖い」と泣き続け、まったく眠れませんでした。大人からすると「ものが倒れるほどではない揺れ」でも、幼い子どもにとっては非常に恐ろしい体験です。

このときに困ったのは「明かり」でした。停電こそしませんでしたが、子どもが怖がって部屋の電気を消せず、深夜から明け方まで煌々と電気をつけたまま過ごしました。防災グッズとしてランタンを一つ用意していましたが、置き場所を忘れていて、あわてて探し回ることになりました。

この経験から、防災用のライト類は「すぐに手が届く場所」に置くことと、子どもが怖がったときにも安心できるような、あたたかみのある光のものを選ぶことを意識するようになりました。また、子ども自身に「懐中電灯はここにあるよ」と場所を教えておくことも、5歳になってから始めました。

さらに、この夜に感じたのは「子どもの精神的なケアに備える視点が、自分の備蓄に欠けていた」ということです。食料や水は揃えていても、子どもが不安を感じたときに落ち着かせるための工夫が何もありませんでした。

それ以来、普段から使っているお気に入りのぬいぐるみを防災袋の近くに置くようにしました。また、子どもと一緒に「地震が来たらどうするか」を絵本を使って話し合う時間を作るようにもなりました。防災教育は大人だけのものではなく、子どもの年齢に合わせた「安心づくり」が必要だと気づいたのは、この地震の夜があったからです。

道具を揃えることと、子どもの心のケアを考えること。この二つは別々ではなく、セットで備えるべきだと実感しています。


アルファ米を初めて食べさせたら、残した話

備蓄食品の定番として非常食のアルファ米を購入し、「賞味期限前に食べよう」と試食した日のことです。長女は当時5歳でしたが、一口食べて「なんかへん」と言い、あとはほとんど食べませんでした。

子どもにとって、いつも食べているご飯との食感の違いが気になったようです。少しぱさついた感じや、普段とは異なる香りが苦手だったのかもしれません。大人の私は問題なく食べられましたが、非常時に子どもが食べなければ意味がないと気づきました。

この経験から「備蓄食品は必ず一度試食する」というルールを設けました。特に子どもに食べさせるものは、事前に「これは非常時のご飯だよ」と説明した上で一緒に食べてみることが大切だと感じています。

また、「非常食だから子どもが食べてくれる」という考えは甘かったと反省しています。むしろ非常時は疲労やストレスで食欲が落ちやすく、「いつもより食べない」ことを想定しておく必要があります。

試食を重ねる中で、長女が比較的受け入れやすかったのは、おかゆ系やシチュー系のレトルト食品でした。味が濃くなく、柔らかい食感のものが好みに合うようです。子どもによって好みは違うため、「子どもが食べられるかどうか」を基準に備蓄食品を選ぶことが、何よりも重要だと気づかされた出来事でした。

賞味期限が来たら食べて入れ替える習慣を続けることで、備蓄食品への抵抗感も少しずつ薄れてきました。非常時にいきなり知らない食べ物を出すのではなく、日常的に「備蓄食品と付き合う」姿勢が、子どものいる家庭には特に必要だと感じています。


同じ境遇の方へ、今すぐできる見直しポイント

子育て中の備蓄は、「大人の備蓄に子どもの分を追加する」という考え方では不十分です。子どもを中心に据えて、「この子が3日間安全に過ごすために何が必要か」という視点で備蓄リストを作り直すことをお勧めします。

まず手をつけてほしいのは、消耗品の見直しです。紙おむつ・ウエットティッシュ・粉ミルク(または液体ミルク)など、月齢・年齢に応じた消耗品を「現在の使用量×7日分」を目安にストックしておきましょう。食料よりも先に底をつきやすいのがこれらの物資です。

次に、子どもが実際に食べられるものを備蓄しましょう。購入したら必ず一度試食し、子どもの反応を確認してください。非常時に初めて出したものを食べてもらえなかった経験から、この手順は欠かせないと感じています。

ライト類の置き場所は家族全員で共有してください。子どもにも「ここにある」と教えておくことで、いざというときのパニックを減らせます。また、子ども用のお気に入りグッズを非常袋の近くに置くなど、精神的な安心のための準備も意識してみてください。

備蓄は「完璧に揃えること」を目標にしなくても大丈夫です。今日一つでも始めること、そして定期的に見直すことの積み重ねが、いざというときの安心につながります。


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出典: 消防庁「災害情報」/ 内閣府防災白書

よくある質問

子どもの年齢によって備蓄の内容はどう変えればよいですか?

年齢によって必要なものは大きく異なります。乳幼児期(0〜2歳)は粉ミルク・液体ミルク・離乳食・紙おむつが最優先です。3〜5歳になると食べられるものの幅が広がりますが、食感や味に好みが出てくるため、試食を通じて「食べられるもの」を確認しておくことが重要です。また、アレルギーがある場合は対応食品の確保を早めに行いましょう。子どもの成長とともに備蓄内容を毎年見直す習慣をつけることをお勧めします。

備蓄の置き場所が確保できない場合はどうすればよいですか?

住宅事情で大きなスペースを確保できない場合は、「分散備蓄」が有効です。クローゼットの隙間、ベッド下、キッチンの棚の奥など、家の中の「デッドスペース」を活用しましょう。まとめて一か所に置くのではなく、分散させることで、部屋の一部が被災した場合にも物資が使えるというメリットもあります。また、子ども部屋に子どもの非常用グッズをまとめておくと、移動時にすぐ持ち出せて便利です。

子どもが備蓄食品を食べてくれない場合、どうすれば慣れさせられますか?

「非常食」という名前で出すのではなく、遠足や特別なピクニックのように「特別なごはん」として楽しく食べる機会を作ってみてください。賞味期限が近づいたものをアウトドア風に一緒に調理したり、非常食の試食を「家族のイベント」にしたりすることで、子どもが抵抗なく受け入れやすくなります。食べてくれたものをリストに書き留めておくと、次回の備蓄選びの参考になります。


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まとめ

3年間の試行錯誤を経て感じるのは、「子育て中の備蓄に完成形はない」ということです。子どもは成長するたびに必要なものが変わり、備蓄は常に更新し続けるものです。

失敗から学んだことの方が、本から得た知識よりずっと役に立っています。台風の夜に子ども向け食料がなかったこと、おむつが足りなくなった大雪の日、非常食を食べてくれなかった試食の日、どれもが「次の備えにつながる気づき」でした。

完璧に揃えようとしなくていいです。まず今日、一つだけ確認してみてください。子どもが食べられる非常食はあるか。おむつは何日分あるか。ライトの場所を家族は知っているか。その小さな確認の積み重ねが、いつか子どもを守る力になります。

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備え太郎
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「備えあれば憂いなし」を座右の銘に、非常袋を毎年アップデートし続ける自称・防災オタク。ローリングストックのせいで冷蔵庫が常に満タン状態。家族から「そんなに買って大丈夫?」と心配されるが、大丈夫じゃない未来に備えているので問題ない。いざというとき一番頼りにされたい人間。

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「備えあれば憂いなし」を座右の銘に、非常袋を毎年アップデートし続ける自称・防災オタク。ローリングストックのせいで冷蔵庫が常に満タン状態。家族から「そんなに買って大丈夫?」と心配されるが、大丈夫じゃない未来に備えているので問題ない。いざというとき一番頼りにされたい人間。

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